かやつりぐさ

綴文字 紡グ詩

もし

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苧麻=もし

 

朝鮮から伝わる苧麻ちょまのことを

現地ではもしというのだ

 

なので日本ではからむし

韓もしからの言葉だろう

 

 

 

もしを扱っている店にいくと

現地に精通している友がここは

死装束をつくる布屋さんだよと

いう

 

わたしにとって

大切、とは

切るに忍びないほどの布ことで

それでも多分着物にするには

はさみをいれることになり

 

いれるに忍びない切なくなるほどの布とは

 

もし、とは

 

と苧麻を目の前にしその工程を実際に知るものとしては

死装束としてその場かぎりみにつける

 

ものとしてのそのとてつもない道のりを

いや、しにゆくひとのあの世への道のりを思って丈夫な上等な

けれど雑草のような強いその草を

人の手間をかけた、つまりは

人の祈りをこめた布を

 

身につける

しにゆく人を

忘れない

 

大切な者として

人の目には

埋葬されたら

もう陽の目をみないものだとしても

そうやって弔いの、

記憶の布をその人に纏わせる

 

その布は生きている者にはもはや

みることがほぼないものだが

 

そうやって貴重な手の技をへて

長く纏うこともなく

 

いやめにみえない領域においては

永遠に纏いつづけるともいえるのだ

 

 

ここのところ

 

かつて大切だとそしてそのようにしていたいと

忘れることができない

いっそのこと

わすれたらどんなにか楽だろうと思うのだけれど

 

一方で刻まれるほどの苦痛の記憶であっても

それが自らの大切にしている日常の根幹であるのなら

そのために織のようなものがあるのかもしれないし

わたしは

こうやって

ことばに紡ぐ詩をつくる

うたをつくる

うたは織なのだ

 

 

それしかできないのだ

いやそんな風にいうのはやめる

 

そんなことができるのだ

 

そんなことが悲しみの向こうがわに

昇華させることのできる

ひとの芸術たるを喜ぶに至る

 

うたがまたうまれるとおもう

 

 

 

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・・・・

すこし前にかいた詩のタイトルが、もし

で、その符号に結びつきまた言葉がうまれる

 

しょうがないしょうがないと

1人のわたしがつぶやいている

 

まだそこにいるの、ともう1人のわたしもつぶやいている

 

まだここにいたいのよ、そのもしたる

布にしがみついていたいのよ

と1人の私もいう

 

燃やしてしまえと暴力的な私がいう

 

分裂しているというより

そのような横糸たちが

織重なっているのがわたしだ

わたしという布だ

 

もう本当の目的のために切られようと

しているのかもしれない 

・・・・・・・・・

 

 

 

もし

 


わたしから

言葉や文字や

いろいろな記録のものが

きえてしまったとしても

 


魂の記録まで

消すことはできない

 


わすれようとされても

けされようとされても

 


もしかすると

なまえまで

わからなくなっても

 


刻んだ大切な記憶

 


大きく刻む

大きく切るように

刻んだ記憶

 


はなくならない

 


いたみのような切ない記憶

それはほんとうに

大切で

 


だから

大きく切るとかくのだ

と今朝気がついた

 


愛おしくて

愛おしくて

切なくて

 


ほっておけなくて

だから

その刻んだ切り傷のような

ところにふれにいく

ふれられにいく

 


消されようとしても

うすめようとしても

 


それが血を伴うような

そんな刻みであっても

 


すぎさったその魂の刻みは

肉体に残る傷痕のように

木に刻まれた標のように

大切にのこる

のこされる