かやつりぐさ

綴文字 紡グ詩

韻

 

 

苦味は蕾

 

苦さの花弁は生命そのもの

その花弁を自らひらきたれば

芯の蜜、実の香

木の根、幹

はては土の気配

水のしみわたる

 

いづこまでも広がり

世界が巡りゆくのを知る

 

 

苦さが解かれてやがて甘さに

 

 

 

ーーーー

 

 

さみしさを感じることが

定期的にやってくる

それはなにかことがあって

感じるときもあれば

何もないのに

なにかと結びつけようと

 

秋だから、とやりすごそうとしていたが

その感情にのみこまれそうに

なっていた

ある日

いつもより深い珈琲をいただいた

 

 

苦みという深い層が表にみえる

壁なのか扉が、なのか

もしくは花弁なのか

中になにかがある

と思う

深く苦味を感じるが

一口、ふた口と

口にするたびに

 

 

その扉を

その包まれているなにかを

しりたいと

口にするたびに

ひらきたいと

扉をノックする

 

 

開きかけたが

なぜ私がそこに惹かれるのか

 

 

そこにはなにがあるのと

2杯目をたのんだ

 

苦味の纏いは

さみしさに似ている

それがなぜそこにあるのか

 

さみしさにはできたら

近づきたくない

のみこまれそうになるから

 

なのに私はそれに近づこうとしている

しかし近づいてみると

その液体に纏うものは

さみしさのふりをしたなにか

(何かのとびらの鍵のようだった)

 

もう少しこの苦味を味わおうとすると

さみしさのようなものは私に

触れてくる

 

けれどわたしに触れた

そのさみしさの花弁は

器から放たれると

 

苦味でもなく

さみしさでもなかった

 

表層のさみしさの奥には

 

豊かな平野があらわれた

そこはときとして

湖辺というかもしれない

清水の湧く森というかもしれない

 

 

珈琲然り

さみしさ然り

苦味は蕾み

 

 

 

ひとことでいうなれば

韻という言葉が響き渡る

 

 

 

 

 

 

おりてくることばの鍵

今朝

 

ちいさな声が

 

ほとり

 

といった

 

なに?

ともう一度

また一度

きこえる

 

ほとり

 

わたしは

ほとりというスコップで

 

言葉の沼をほりおこそうと

きめた

 

 

そうやって

鍵の言葉は

 

日々与えられているはずなのだ

 

わたしの心の耳は

またきこえるようになってきたのかもしれないし

 

その鍵を沈めずに

自らの深淵を

ほりおこす道具として

使うのならば、と

 

言葉の鍵

キーワード

 

はそうやって

みえるかたち(きこえるかたち

でおりてくるのだ

 

 

 

生まれておいで生きておいで

光が移行していく

 

私より旧い石の、高い壁の上に光がさしている

 

座してしたの方より

わたしはそのひかりを目で追っている

人が静かに動いている

微風に糸でつられたものたちも

揺れ動いている

 

光はかわらず

その速度で移り

 

わたしはその光と陰の

かわりゆくフレームを

観光している

 

光を観る

 

特にない

気持ちがはずむものもなく

高揚もない

 

けれどその自然光を

わけもなく観る

その行為に

 

わたしは不覚にも涙した

しかしそれは深いよろこびによるものだ

 

はじめて光を観たかのような

 

いやそれはうまれてきたときの

記憶の再現のような

 

そのときの感動なのか

驚きなのかを

 

すでにおなじようにすべてのひとに

あたえられている

その事実に何度も何度も

私は知らされるのだ

 

穏やかにけれど

あまりにも色濃く

 

 

 

光が穏やかであればあるほど

祝福を感じるのだ

 

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5

「こんな日は」

 


ていねいに

お茶でものみましょう

 

 

 

僕にはまだ

お茶や珈琲の味はわからない

でもお茶、という響きがすきだ

 


お茶のお菓子はなにかしら

 


「こんな日」

 


はうれしい日もかなしい日も

でもお茶の時間を設けると

それもすべて良き時間になるのよ

と大人たちがいう

 


ゆっくりしましょう

すぎさる時間を

とめるように

茶に浸るように 

そこには「良き」しか

ないのですよ、と

 


僕はお気に入りのカップを

棚から取りに行く

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4

 

森へ

 


おおきな木たちは

葉を落としては

じゅうぶんに

あるくぼくの道を優しくしてくれる

ふかふかなんだ

 


雨がふり木漏れ日を浴び

どんどん土になっていく

お気に入りの

広場みたいな秋の葉っぱたち

 


ぼくは葉っぱ広場ってよんでる

 

 

 

あそこにいくと光が

木漏れ日から

大きく

照らされて

まるでどこかの

舞台をみたような気になる

 


雨が降るときも

小音が大きな音に変わる

その様子を感じるのが

ぼくの森へいく理由

 

 

 

舞台、なんだ

 

 

 

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3

 

少年はちいさな丘の上まで登ってきた

 


そこにはちいさなほこらのようなものがある

 

 

 

いつもそっと何かをしのばせておくものを

ポケットにいれておく

 


くるみのときもあれば

シロップの入った小瓶のときも

誰に渡すでもない

ちいさなてがみのときもある

ここにくるのは10日ぶりだ

 


見晴らしはとてもよい

虹を見るにはさいこうだ

 


雨は少しまだふっている

雨宿りには少し小さいが

今日は僕がそこにしばらく

置かれることとしよう

 

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2

 

井戸の水を汲むのは

ぼくの役目だ

 


朝起きて木の桶二杯分の水を汲む

前はもう少し歩いた山裾にまで

湧き水を汲みにいったのだと

井戸をほったらしいじいさんが

いっていた

 


どうして井戸に水がわいているのか

とても不思議に思ってのぞいたことがある

深く深くほったその底に

すこしだけけれど

いつも水がたまってる

でもぼくのところまで

あふれることはない

 


たまに石を投げて見る

おーい、と声をかけてみる

 


そんなことはほんとうに

たまにしかしないのだけど

 


あふれないのなら

一度じいさんみたいに

そこまでおりて井戸の底を感じてみたい

 


でもまだその勇気はないんだ

 


ぼくが汲んだ水をみんな

とても大切につかってくれる