かやつりぐさ

綴文字 紡グ詩

信頼について 引用

信頼とはいきることの基盤をなしている

 

自己への信頼も他者との信頼の間に育まれる。心を開いてくれる他者と出会えたとき人は他者との間だけではなく

自己との新しい関係をも結ぶことができるのはそのためだ

 

心を開くとは

他者を迎合することではない

そうしてしまうと相手だけでなく

自己からもどんどん遠ざかってしまう

むしろ心を開くとは

自らの非力を受け入れつつ

露呈しつつ

しかし変貌を切望することではなかろうか

変貌の経験は

自分を捨てることではない

自分でも気がつかなかった未知なる可能性の開花を目撃することである

 

若松英輔

悲しみの秘儀より

121頁