かやつりぐさ

綴文字 紡グ詩

田傍の草

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田植え前の水の満たされる姿が好きだ

草をそして草花をよむことが好きだった人が

旅立たれたのは

この季節

 

どのような草かもわからずに

その音となまえだけをたよりに

いつのまにかその草の名とともに

ことばをわたしもよむことになった

 

なまえというのは不思議で

どのようなものかわからないままも

重なり重ねていくと

そのものになっていく

 

 

その草の名前は

かやつりぐさといって

この季節とくに畦や路傍にはえているという

 

いつしか

その草を編んだものや

形つくったものをいただいたこともあるし

いまでは、かやつりぐささんと

呼ばれることもある

 

 

この季節に旅だったその人は

 

かやつり草あいたき人のみな遠し

 

と病の処でよんだという

 

うたというのは不思議で

もし自分がその草となり

そのものになり

そこにいくことができるし

 

その人と直接会えなくなっても

うたとしていきつづけうたの中で生き会えるのだ

 

なまえとして心に抱き続けるかぎり

しなない

旅に出ておられさみしさはあるが

不思議と生きておられると感じるのだ

 

 

本という媒体を愛するものとしてかやつりぐさは紙の原料であるパピルスの一種でもあるし

そのむかしバンド名を決めるときもメンバーがまさかのラテン語のかやつりぐさであるキペルスパピルス はどうかといってきた

そのなまえの符号は

 

かやつり草、あいたきひと、からの

短いけれど大きな手紙であり

 

田傍に生え茂るかやつりぐさは

田歌というなまえになりかけた

わたし自身への愛の讃歌でもある