なまえというのは
驚きである
エネルギーだけを
ここ数ヶ月感じていた存在が
いまこうやって
世に出てきたと
知った時
名を知った時
まだこの目であったこともないのに
涙がとまらない
といういま
詩はできても歌はできないと
言っていたわたしに
歌が、すーっとやってきた
それはほんとうにやってきた
わすれないように
わすれないように
口ずさむ
帰り道
この涙はなんなのだろう
うれしいともかなしいとも
違う
そんなもんじゃない
けれどもわんわん泣いた
自分でもどうしたらいいか
わからない
なきやむ必要もなければ
慰められる必要もない
ただ
うまれてきたときの
その人がきっと抱いたであろう
待ちにまっていたよろこびのような感覚と
あまりに内なるところにいたときとの
違和感の
ショックのようなものと
ただただ泣くことで呼吸しはじめた
あたらしいひとと共鳴した
歌詞はもうきっとある
のせる言葉はもうある
その、うまれてきたひとの名が
前もって考えられていたかどうかはわからぬが
なまえはなづけられると
そのものでしかないと
それしかないと
思ってしまうのと同じように
うまれる力のようなものを
知らぬ間に何気なく
相対的にいただいていたような気がする
ちいさいながらも
わたしもいまうまれたのだ
もしくはうみだしたのだ
そして
かつてだれもが
うまれてきたちいさな愛しい存在で
うまれてきたそのひとが
そうであるように
わたしも
あなたも
無力で無防備で
なのに完全で
力に満ち満ちている
それはうまれたときから
連綿と綿が糸に紡がれるように
つづいている