何も湧いてこない
何もおとずれてこない
ズドンと鈍器のようなおもしが蓋となっている
暗闇と痛みだけ
重さとかなしみ
痛みさえ通り越して何も感じない
とどいた手紙も封印されてきっと届かない
風だけが吹いている
すすきの原を風が吹いている
わたしはいつのまにかその重石になっていた
地面から暮れていく空を石がながめる
渡り鳥が曲線を描いて飛んでいくね
とそばにいた石がいう
ほんとうに?
目を凝らすと
ああほんとうに
染まる暮れゆく空を
渡っていく
点の群勢が
天の群勢が
めをあげると
重石はすこしかるくなっていた
重石のすきまから溢れるものたちのささやかなこえをきく
湧き出る泉の場所はここにあったのだ
言葉を押しとどめていたのはわたし