'一雨'
雨の跡
潤された森の中で
私は一枝折りそれを道標にした
その枝からひとしずくひとしずく
苔むしったところへ雨が垂れていく
その場所で、またそこから流れて
大きな流れになることをその雫は知ることもなくただただ大地の力にゆだねていく
私の足音がしばし止まって水の「足音」を聴く
そしてしばらくしてまたその水音と重なって私はふたたび歩くだろう
土になろうとする葉や草をふみならす
その重なりあった音が
旅の栞のようにいく先を示す
私のあるくその一足一足が
枝から落ちるひとしずくとひとつになる
一は一であり、全だ
全はまた上昇してみえないほどになるがまた一となっていく