かやつりぐさ

綴文字 紡グ詩

輪郭

 

 


朝起きたら寝る前もここしばらく考えていた

その人の存在を忘れていた

それは残念というよりも

どこかでほっとした感覚があって

 


けれども忘れていたとわかった途端

輪郭がみるみるうちに蘇っていく

 

 

 

 

 

 

この輪郭さえ忘却していた

私のこころの変化に

ほっとした私

 

 

 


風景にただとけこんでいる大勢の人から

 


私の人生の登場人物として

デッサンする時に線を描くように

何度も輪郭をなぞっては

消しゴムをかける

 


願っているのか

願ってないのか

 


消しゴムで存在を薄めようとしては

 


また輪郭をなぞる

 


忘却する装置と忘れまいとする装置

 

 

 

ああかぐや姫

 


忘れたくない

忘れたくないと

いいつつ

 


月にかえると途端すべての

地上での思い出を、

情念をなかったかのように

 


悩みも苦しみもなくなる

 


けれどそれと同時に

 

 

 

愛しく思う気持ちを失うことなのだ

 

 

 

絶望は要らないと口で言いつつも

そこからうまれる線の豊かなことよ

 


その線をひとは芸術ともいう