かやつりぐさ

綴文字 紡グ詩

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春に高松港から豊島という島に渡るのに待合室にいったらにこやかなおじいさんたち数人をお見かけした。大きな待合室の横に療養所の事務所をみつけここにもあるんだ、と心に留めながら旅から帰った。

高松港からすぐの大島という島に国立青松療養所、というところがある。ハンセン氏病とされて隔離されていた人たちが今もおられる島だ。
どんどん高齢化がすすみ、存在自体が忘れ去られようとしている。



いまは完治する病気。けれど人によっては幼いときからずっと故郷から離れてここに住むしかない。多分ほとんどの方がこの島に骨を埋める。亡くなられても故郷に戻れない方が多い。
こどもを産むこともゆるされなかった。



私が改めて興味をもちはじめたのあんという映画だった。

東京都にある、療養所からくるおばあさんがつくるあんこの話。すべて自給自足して、和菓子職人もうなるようなあんこ名人のおばあさん。
おばあさんは、小豆が育って風にふかれている姿を想像しながらあんこを炊く。小豆のシーンで私は泣いた。

美味しいと噂になればなるほど、別の噂でおばあさんのあんこのはいった鯛焼きは売れなくなって、おばあさんは来なくなった。



人の中にある払拭できないものが根強くあるのを知れば知るほど、あんこが深みのあるものに感じていく。

これだ、ということばがでてこないけれど、私はこのおばあさんの作ったあんこの鯛焼きが食べたい。

島も行ってみたい。